所々から噴出す血。
血を出しすぎ、最早そこは血の海。
それでも眉を顰めるだけで、唯私を見つめる彼 スクアーロ。
「はぁ。如何してこんな怪我して帰ってくるの?」
彼が怪我してくることは珍しいが、必ずといって此処に来るときは大怪我をしている。
私は医者やってたりするから怪我したらくるのは当たり前だけど、何も瀕死寸前の姿で歩いて私の部屋まで来なくってもいいじゃない。
素直に誰かに呼びに行ってもらうか、電話とかで私を呼んでよ。
じゃないと死んじゃうよ?
私だって死んじゃったら治せないんだよ?
「…………」
いつもなら無駄に煩いスクアーロは無言で私を見つめつつ、ギュッと手を握ってくる。
その掌からスクアーロのちょっと低い体温が伝わってくる。
「重症なのに何やってるのよ」
と言いつつも今まで手なんか繋いだことない私はドキッとしてしまう。
の手は綺麗ぇだなぁ」
スクアーロが何時も言う言葉。
呪いの様に私の心に広がっていく。
如何して今言うのだろう。
此れからスクアーロを治療するって時に言わないでほしかった。

だって私の手は『神に愛されし手』と呼ばれているけど―――――。



何一つ良い思い出のない過去。
私の過去と言っても今とそほど変わらなく、幼少時代から人を殺しそして生かしてきた。
矛盾したこの行為。
時々思う。
いったい私は何をしているんだろう。
でも此れは私達一族では当たり前で、母も父も皆そうやって生きてきた。
私達はただただ病人を治すだけじゃ生きていけない世界にきているから。
治した手で人を殺す。
噂が一人歩きしてしまい狙われる自分の身を守る為。

今日も数人殺し、今この穢れた手をスクアーロに握られつつ前に立っている。
私のこの矛盾した行為を知っていてもスクアーロは『綺麗な手』と言う。
止めて。
全然綺麗なんかじゃない。
それに元を辿れば、人を殺したという罪に耐えられなくなった曾伯父様が罪滅ぼしのつもりで始めた医療。
きっと私もエゴで人を治しているだけ。
私は神にも悪魔にもなれなかった堕天使。







神に愛されし

天使ルシファー


矛盾する存在